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暮らしてみたアメリカのこと。留守にしていた日本のこと。

続・繰り返すことの難しさ Part III

私は映画『スター・ウォーズ』を観たことがない。そのことをパーティの席で口にすると、目の前のアメリカ人に「お前はそれでも人間か?」と言わんばかりに驚かれた。

「『ゴッド・ファーザー』なら全部観てるよ」と切り返したが、その意味するところが彼に伝わったかどうか分からない。私の中で両者は「一作目に劣らない続編をふたつみっつ世に出した希有な映画」という括りの中にある。

『スター・ウォーズ』ファンの間では、どの作品が好きかでその人の性格が分かると言うらしい。それぞれ違いはあっても、出来の甲乙はつけ難いということだろう。『ゴッド・ファーザー』については周知の通りだ。観たことのない人間なんてこの世にいるのだろうか!?

『ロッキー』『ダーティ・ハリー』『バッドマン』『ジョーズ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『インディアナ・ジョーンズ』。一作目の作品のクオリティーを保ちつつ、あるいは凌駕してシリーズものを作ることの難しさは、こうやって同時期のアメリカ映画のタイトルを思い浮かべるだけでもよく分かる。

そしてもちろん、これは映画に限ったことではない。

 

ヌジャベスという男がいた。瀬場潤という名を英語表記して反対から読むとこの呼び名になる。

90年代後半から活躍した日本人のヒップホップのトラックメーカーで、その筋では伝説的な存在だ。サンプリングで曲作りするこのジャンルにオリジナルという形容は使いづらいが、乾いたビートの上に一聴してそぐわないメランコリーな旋律を乗せて構築する彼の音楽には、独特の雰囲気とテイストがある。

その彼とShing02という日系のヒップホップ・アーティストがコラボレーションして作ったシリーズに『Luv (sic)』がある。特筆すべきは、この全6曲のシリーズが一作ごとにクオリティーを増し、ピークが Part IV (4作目) にくるという珍しさだ。

残念ながら5作目、6作目の出来の悪さも際立っているのだが、これには明確な理由がある。ヌジャベスが交通事故で命を落としたのだ。

Part IV (4作目) のリリースは彼の逝去の翌年2011年だったが、トラックは彼の作品と考えて間違いない。しかし残りのふたつは関係者が引き継いで作ったとしか私には思えない。グランド・フィナーレと謳った6作目は、瀬場氏の携帯に残されていたというビートを使っているらしいのだが、仕上がりはヌジャベスの音楽に聞こえない。

それにしても Part IV (4作目) は素晴らしい。歌詞もビシッと決まっていて、出だしはこうだ。

 

 Snow flakes in January

 Heart warm like February

 I wouldn't ordinarily

 March to the drum, play a fool like April

 May the best dance in a Juno bridal

 Power of the will, Julius and Augustus

 Oh you know, it's just us

 In a new semester, back in September

 boy, I wonder if you still remember 

 

Shing02の歌詞は真っ直ぐすぎて私のような擦れた人間には聞いていて面映いのだが、月の数え歌にもなっているこれには心動かされる。

あまりの切なさとあまりに出来映えの良さに、もしヌジャベスが生きていたら、このコラボレーションは回を重ねるごとにテンションを上げていったのだろうかとふと思う。

しかし、それはまた違う話しなのだろう。この曲は彼の突然の死から間もない時期に編まれた。Shing02以下、関わった者たちは皆深い悲しみを抱えたまま作品を完成させたはずだ。そんな状況で作られた哀悼歌の輝きが一回性のものであっても不思議はない。

 

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