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暮らしてみたアメリカのこと。留守にしていた日本のこと。

2017-01-01から1年間の記事一覧

香港日記 2

Day 1 入国審査官がパスポートを投げて返した。ボーっとしていた私は、それで目が覚めた。ここは日本じゃないんだ。 香港駅からホテルへはリムジンで行く。前に来たときはタクシーの運ちゃんと口論になったんだった。「ホテルまでいくら?」と尋ねたら、「こ…

グルメな私

このブログに食べものの話は出てこない。それは私がいわゆる食通じゃないから。 私だって人並みに美味しいものを食べたいと思うし、食べたときはうれしい。でもそのためにどれくらい努力するかというと、ほとんどしない。所詮ただのメシだろ? という野卑な…

赤信号

仕事帰りの夜道で、車に轢かれそうになった。 いや、ちょっとそれはオーバーか。赤信号の横断歩道を渡る私に、ドライバーがたぶん意地悪をしたのだろう、車を目の前まで寄せてきたのだ。それだけのことだったのに、ぼーっとしていた私は飛び上がらんばかりに…

肩がふれたら

ある匂いを嗅ぐと、特定の記憶が蘇るという「プルースト効果」は、よく聞く話だ。 ではある行動をとると、必ず思い出す人がいるというのはどうだろう? 私にはいくつかそのパターンがある。 洗面所に立ってうがいをするとき、なぜか決まって思い出すのはあの…

小説の話

読みかけたままの小説が増えている。以前は一度手にしたら、ちゃんと最後まで読み通したのに。 好きな作家の作品でも、途中でつまらなくなると止めてしまう。こんなはずじゃないと思ってもう一度トライしても続かない。いとうせいこうの「我々の恋愛」も、小…

いいね

承認欲求を捨てなさい。ブッダはそう説いた。 でもSNSを覗くと、誰も彼もが承認中毒気味に見える。 「私、病気かもしれない」 知り合いのカメラマンが、聞き捨てならないことを言う。 「褒めらわないとやっていけないの」 一緒に写真を展示したことのある彼…

大岡信の「地名論」

授業中の教授がそわそわし始めた。顔を赤らめている。 もったいぶった前置きの後、おもむろに詩の暗誦を始めた。 ポーの「アナベル・リー」だった。 大の大人が若者に向かって詩の朗読することの気恥ずかしさは、自分がおじさんになった今なら理解できるけど…

ディア・アメリカ

アニメでもSF映画でもいい。空を飛ぶ巨大な乗り物が不時着する場面がある。 例えば宇宙船。風が吹き荒れ、辺りは轟音に包まれる。 周りのものすべてをなぎ倒して、地面を削りながらスライドしてゆくカタストロフィックなシーン。 止める術はない。 アメリカ…