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暮らしてみたアメリカのこと。留守にしていた日本のこと。

2013-05-01から1ヶ月間の記事一覧

祖母の短歌

引っ越しの整理をしていると、祖母が書き溜めたメモがたくさん出てきた。短歌を詠むのが趣味だった彼女、浜田としえは、同好会の仲間の作品をコピーした紙の余白に、自分の感想や批評を小さな文字でびっしりと書きこんでは何度も読み返していたらしい。 この…

成田空港から実家までの道中で見かけたもの

空港第2ビルの上に架かるオレンジの夕陽。 乗り継ぎに走るラオス人女性のポニーテール。 無言の入国審査官の青い制服。 「清掃中」のサインにもかかわらず小便をしにトイレに入る男たちの非礼に耐えながら掃除を続ける中年女性の背中。 人気の少ない空港出…

押せば開くドア

タフで優しかったアメリカ ― 。 これじゃ三流映画のキャッチコピーにもならないけど、この国を去るにあたって頭に浮かぶ言葉ではある。ここでは、すべてを自己責任に帰する冷徹さが幅をきかせている一方で、求めれば、信じられないような寛容さにめぐり逢え…

写真について 1

「写真なんて、誰でも撮れる」とは私の父の言葉だが、これには一理も二理もある。シャッターを切れば写るのが写真だから、5歳の子供と写真家を二人並べて目の前の風景を撮らせたら、子供の作品の方がずっと面白かったなんてことは充分にありえる話だ。 昨秋…

さあ、帰ろう

あまり遠くまで行くと、人はやがて家路につくことになる。でも駅に佇むばかりで、列車には乗れない。 「ブラインド・ラブ」by トム・ウェイツ とにかく遠くへ行きたかった。そして、ずっと帰りたくなかった。 大学を終えても就職する気持になれず、バックパ…