f8

暮らしてみたアメリカのこと。留守にしていた日本のこと。

もらえたよ、免許証

二俣川と聞いて、自動車教習所を思い浮かべるなら、きっとあなたは神奈川県民だ。っていうか、それ意外何も思いつかないよな、などと考えながら二俣川駅の改札口に向かっていると、「教習所はこちら」という巨大な看板が正面に掲げてあった。何もそんな大き…

絞りは標準

このブログのタイトル、f8は、「F8. Be there」というフォトジャーナリストへの箴言からとった。どうしたらいい写真を撮れるのか問う弟子に、マスターがひと言、「F8。その場にいること」と答えたというエピソードは、アメリカでよく耳にした。 F8とはFocal8…

ミックステープ

パーティーで出会った男とミックス・テープの話になって盛り上がったことがある。彼も40才台のロックが好きで、気に入った曲を編集して友人にあげることがやめられないらしい。 いい年して中学生みたいだし、著作権の侵害だし、趣味の押し売りははた迷惑だか…

湘南新宿ライン 1

「このないだ席替えがあったときさ、マッツが私の隣がいいって」 「えー」 「でも、押しすぎてもヤバイから、いま様子見で」 「いくつですか?」 「23。アタシより6つ下だけど、前の女は12上だったって」 「げっ、ウソ」 「ヤベ君もいいんだけどさ、ち…

祖母の短歌

引っ越しの整理をしていると、祖母が書き溜めたメモがたくさん出てきた。短歌を詠むのが趣味だった彼女、浜田としえは、同好会の仲間の作品をコピーした紙の余白に、自分の感想や批評を小さな文字でびっしりと書きこんでは何度も読み返していたらしい。 この…

成田空港から実家までの道中で見かけたもの

空港第2ビルの上に架かるオレンジの夕陽。 乗り継ぎに走るラオス人女性のポニーテール。 無言の入国審査官の青い制服。 「清掃中」のサインにもかかわらず小便をしにトイレに入る男たちの非礼に耐えながら掃除を続ける中年女性の背中。 人気の少ない空港出…

押せば開くドア

タフで優しかったアメリカ ― 。 これじゃ三流映画のキャッチコピーにもならないけど、この国を去るにあたって頭に浮かぶ言葉ではある。ここでは、すべてを自己責任に帰する冷徹さが幅をきかせている一方で、求めれば、信じられないような寛容さにめぐり逢え…

写真について 1

「写真なんて、誰でも撮れる」とは私の父の言葉だが、これには一理も二理もある。シャッターを切れば写るのが写真だから、5歳の子供と写真家を二人並べて目の前の風景を撮らせたら、子供の作品の方がずっと面白かったなんてことは充分にありえる話だ。 昨秋…

さあ、帰ろう

あまり遠くまで行くと、人はやがて家路につくことになる。でも駅に佇むばかりで、列車には乗れない。 「ブラインド・ラブ」by トム・ウェイツ とにかく遠くへ行きたかった。そして、ずっと帰りたくなかった。 大学を終えても就職する気持になれず、バックパ…